医学モデル工業との共同研究「咀嚼筋・表情筋模型の開発」進行中!

高見寿子さんとの出会いは2年前に遡ります。1934 年にドイツ語で出版された解剖学者故藤田恒太郎先生(東京大学名誉教授)の学位論文「Über die periphere Ausbreitung des N. facialis beim Menschen(ヒト顔面神経の末梢分布について)」(原書)を読みたいという本人の強いリクエストに応えて、一緒に翻訳を始めたことがきっかけです。勉強したことのないドイツ語、しかも専門用語で書かれた科学論文を毎週何時間もかけて予習をして臨む彼女の学問に対する姿勢が印象的でした。その後、新潟大学と癒し空間ふぅ、医学モデル工業との共同研究「咀嚼筋・表情筋模型の開発」に発展しました。

 

医学は生命科学で明らかになった科学的根拠(エビデンス)を基盤に成り立っています。しかし、我々人間が理解していない多くの未解決の問題が残されているのも事実です。例えば解剖学のバイブルと位置づけられているGray’s Anatomyの表情筋の記載ですら、必ずしも正しいとは言えないという事実があります。従って、教科書の記載であっても、すべてを鵜呑みにするのではなく、批判的に事実確認することを求められます。高見寿子さんは、事象を科学的に捉える能力・感受性に長けており、エステティシャンとして人の身体を施術することを通して感じた疑問を、実際の自分の目で確認して事実を検証することにより、エビデンスを技術にフィードバックし、日々自らの技術の向上に努めているエビデンスに立脚したエステティシャンと言えるでしょう。また、咀嚼筋・表情筋模型の開発では、目標設定と妥協を許さない方略の実践と研究者としての能力の高さにも感心しています。

 

新潟大学歯学部教授 大島勇人(口腔解剖学専攻)